2017/1/13 06:19
残業過少申告は違法
電通の社長は高橋まつりさんの過労自殺した問題で、同社と当時の上司(東京本社幹部)が厚生労働省東京労働局に書類送検されたことを受け、引責辞任する。時間外の過少申告をさせ、36協定内に収めるように申請させる手口は悪質で、これに類した手口は多くの企業でおこなわれている。
今度は、三菱電機で過重労働で適応障害になって解雇された労働者が労災認定された。上司の過少申告をするよう指示したことが悪質であるとし、書類送検された。電通は社長が責任とって辞任したが、サービス労働をよしとする企業文化は、黙示の時間外命令が成立しているのに、労働者の自己申告によることが原因である。毎日残業しないと仕事が終わらないで残業は下命によるものと自己申告を委縮させるのが問題なのです。
労働時間の把握義務が企業にあり、残業自己申告と実態労働が異なることを上司は認識していながら、36協定超えないように過少申告をさせたことが悪質としています。電通も三菱電機も残業不払金を支払ったのか公表していないが、全社員に時効2年分支払うと巨額になります。以下新聞ニュース転記。
中日新聞 2017年1月11日 夕刊
三菱電機(東京)が労使協定(三六協定)で定めた上限を超える残業を入社一年目の男性社員(31)にさせていたとして、厚生労働省神奈川労働局は11日、労働基準法違反容疑で法人としての同社と当時の上司一人を書類送検した。男性は精神疾患を発症、その後解雇されたものの、昨年11月に労災認定されている。
労働局は、検察側に起訴を求める「厳重処分」の意見を付けたとみられる。
政府が働き方改革に力を入れ、経済界トップも長時間労働に歯止めが必要との認識を示す中、昨年末に書類送検された広告大手、電通に続き、大企業が若手社員に違法残業を強いていた実態が明らかになった。今後の過重労働対策に一層注目が集まりそうだ。
三菱電機や当時の上司の書類送検容疑は2014年1~2月、労働組合との協定で定めた上限の月六十時間を超える七十八時間九分の残業をさせたとされる。
代理人を務める弁護士によると、男性は大学院博士課程を経て一三年四月に入社し、同社の情報技術総合研究所(神奈川県鎌倉市)に配属された。14年1月には百時間以上、2月には160時間以上の残業をしたと主張。同年1月16日から2月15日の残業時間は59時間30分と過少申告したとしている。同年4月には適応障害と診断され、うつ病の治療を受けた。
男性が病気療養のための期間を過ぎたとして昨年6月に解雇されたが、労災申請し、藤沢労働基準監督署(神奈川)が、厚労省の基準を大幅に上回る残業が精神疾患につながったことを認めた。神奈川労働局が違法残業があった疑いがあるとして調査し、裏付けの取れた残業分を立件した。男性は労災認定時に「勤務時間を申告する際、上司から残業時間を短くするよう指示された」と、社内で「残業隠し」があったと証言した。
三菱電機は1921年に設立された三菱グループの総合電機メーカー。2014年3月期の連結売上高は4兆3943億円、連結従業員数は約13万5千人。
◆社側「真摯に対応」
三菱電機は11日、違法残業の疑いで厚生労働省に書類送検されたことについて「真摯(しんし)に対応していく」(広報担当者)とのコメントを出した。「適切な労働時間の管理を徹底していく」とし、管理者や従業員を指導していく方針を明らかにした。労災認定された元社員の男性が働いていた情報技術総合研究所(神奈川県鎌倉市)では当時、労働時間を客観的に把握する仕組みがなかったが、現在は全社で導入したという。
◆入社1年目、月160時間
◆「中学生でもできるぞ」上司に罵倒され続け
一カ月以上休めず、不眠を訴えても仕事は減らなかった。上司に罵倒され、自殺を考えるほど追い込まれた。三菱電機で違法残業を強いられた男性(31)は当時の働き方を振り返り「あれでは良い製品が作れるはずがない。経営者は意識を変えてほしい」と訴えた。大学院博士課程修了後、2013年4月に入社。研修で怒鳴り散らす先輩の姿や体育会的な雰囲気に違和感を持った。配属先の情報技術総合研究所(神奈川県鎌倉市)では名札だけで姿を見せない社員が何人もおり、尋ねてみると、休職している人たちだったという。 男性によると、秋ごろから担当していたレーザー技術の研究が多忙になり、その後、製品のトラブル対応も任せられるようになった。14年2月には月に160時間もの残業をしたといい、食事が喉を通らなかったり、手が震えたり体の異変を感じるようになった。上司からは「よく博士号を取れたな」「中学生でもできるぞ」などとあざ笑うような言葉を何度も浴びせられたという。「社員を極限状態にして成果を求める企業体質を誰も悪いと思っていない」。自浄作用には期待できないと嘆く。
違法残業への世間のまなざしは厳しさを増している。男性は「飲酒運転は悲惨な事故をきっかけに厳しく断罪されるようになった。労働法規に違反することは犯罪だという意識が広がってほしい」と話した。
同事件記事リンク
毎日新聞2017年1月11日 23時02分(最終更新 1月11日 23時02分)