2017/1/22 17:38
「勇気を出して、人事や上司に相談していたのに、誰も娘を助けてくれなかったのです」
(高橋まつりさんの母)
電通の高橋まつりさんの過労による飛び降り自殺は、遺族への謝罪、社内関係者処分で一区切りついた。遺族へは時間外労働不払90万円と慰謝料支払し、再発防止対策を約束して謝罪した。
慰謝料額は非公開であるが、25年前の1991年にも24歳男性の過労自殺に対して最高裁で和解て9000万円の和解金を支払っている。居酒屋「和民」のるワタミ株式会社は、入社2か月の女性正社員が過労自殺した事件は1億3,000万円もの和解金を支払っています。JR西日本旅客鉄道では約1億円でした。今回の電通の事件は労基法違反、パワハラと安全配慮義務違反の重過失があるので1億8千万円ぐらいと推察します。高額すぎるがゆえに非公開扱いしたのではないかと思います。以下関連ニューススクラップ
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電通過労自殺 母親のコメント全文1月20日 22時16分
本日、会社(電通)との合意書調印に踏み切りました。調印を決意した理由は、娘が業務により亡くなったことについて、会社が責任を認め、謝罪したこと、電通の社風・過重労働の象徴であった鬼十則を、会社が社員手帳から削除したこと、娘が死ぬほど辛かった、死の原因となった深夜残業・休日出勤について、会社側はこれまで私的情報収集・自己啓発などと扱い業務として認めていなかったが、会社は、これを改め、サービス残業をなくすことを約束したこと、会社が、深夜残業の原則禁止など、改革をすでに始めていること、会社が、パワハラ防止のために全力を尽くすことを約束したこと、会社が、業務の改善と改革の実施状況の報告を、今後、遺族側に定期的に行うことを約束したこと、業務の改善と改革に向けて、役員・管理職が研修会を行い、遺族側の話を直接聞く場を設けることを約束したことなどです。
石井社長が昨年末に辞任の発表をされましたが、社長交代・役員交代が行われたとしても、二度と同じ悲劇を繰り返さないように改革に向かってほしいと思います。
以上、会社との合意には至りましたが、会社側がどんなに謝罪を述べたとしても、再発防止を約束したとしても、娘は二度と生きて帰ってくることはありません。しかし、まつりが今でも東京のどこかで元気に暮らしているような気がしてなりません。テレビに映る娘の姿を見るたびに「ああ、本当にまつりは死んでしまったんだなぁ。。」と茫然とします。まつりに会いたい。まつりを抱きしめたい。でも二度とかなうことはないのです。娘を失った悲しみが癒えることは決してありません。
しかし、娘の尊厳を守るためにした労災認定の発表で、娘は労働問題のシンボルになり、日本中の働く人に大きな波紋を投げかけることになりました。娘や、これまで過労で亡くなった多くの人たちの死をむだにしないためにも、日本に影響力のある電通が改革を実現してほしいと思います。深夜残業禁止令を出しても、業務量や人員の調整・コントロールをしないと、時間規制は実現できません。業務量などの現状を改革していくことに対しては、企業の中に反対する人もいるでしょうが、強い決意を持って改革を実行していただきたいと思います。
政府には、「働き方改革」についての真剣な議論によって、36協定延長時間の上限規制、サービス残業に対する罰則を含む規制の強化、サービス残業を助長するような固定残業制の禁止、勤務間インターバル制度の導入など、働く人を守るために法律改正をしてほしいと強く希望します。 最後になりましたが、私どもを励まし、支援してくださったすべての方々に心より感謝いたします。そして、石井社長に話した内容の全文です。
本日、合意しましたが、娘は二度と生きて帰ってこないし、抱きしめることはできません。娘が死ぬほど辛かった、死の原因となった連続の深夜残業・休日出勤。これらの業務が私的情報収集・自己啓発などの名目で業務として認められていなかったこと。このことが原因で、娘の残業申告時間は月70時間に収まっていました。そのため、娘は産業医との面談も受診もしていませんでした。
これらが業務として認められていたら、残業時間を正確に申告することが許されていたら、娘はどこかで誰かに救われていたかもしれません。娘は死なずにすんだかもしれません。「ハラスメントや長時間勤務に関する相談が本人からなかった」と言われていますが、彼女のメールには、くり返し「会社に行くのが怖い」「上司が怖い」「先輩が怖い」「相談したことがわかったら怖い」とありました。
電通における社風「体育会系レベルではない異常な上下関係」「年次の壁は海より深い」と娘が言っていた社風であるのに、新入社員が相談できる相手は年のごく近い先輩だけしかいなかったのです。人事に相談しても有効ではなかった。12月には特別条項まで出されていました。11月に勇気を出して、人事や上司に相談していたのに、誰も娘を助けてくれなかったのです。
娘が生きていたら、誰かが娘を助けてくれていたら、娘は今でも電通のために働いていたでしょう。娘の希望どおりに英語や中国語を活かして仕事をしていたかもしれません。そして、娘の描いていた夢のとおり、将来は母と弟を招いてハワイで結婚式を挙げ、子どもを産み、母を東京に呼んで一緒に住んでいたかもしれません。私は、娘と一緒に孫を育てていたでしょう。
日本の発展に貢献するために教育を受けてきた娘は、それを実現することができたでしょう。私は今でも娘を抱きしめることができたでしょう。皆さんは、このことをしっかりと心に刻んでください。
彼女の配属希望では、デジタル部門は7部門中、いちばん希望しない7番目でしたが、娘は電通の仲間として迎えられたことを誇りに思っていました。世間では、彼女は電通に入社しなければよかったのにと言われています。こう言われていることを返上できるよう、1人残らずすべての社員が幸せにいられる会社に変えてください。
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電通社員過労自殺 遺族へ謝罪や再発防止策などで合意
2017年1月20日 17時25分 NHK
大手広告会社、電通の新入社員だった高橋まつりさんが過労のため自殺した問題で、高橋さんの母親と代理人の弁護士が記者会見し、電通が遺族に謝罪し、再発防止の措置高と取るとともに慰謝料などを支払うことで20日、合意したことを明らかにしました。
電通は、新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が過労のため自殺した問題を受け、高橋さんを含む社員に違法な長時間労働をさせたとして先月、労働基準法違反の疑いで書類送検されています。
20日、高橋さんの母親の幸美さんと代理人の弁護士が記者会見し、電通側と話し合いを重ねた結果、合意書に調印したことを明らかにしました。合意書には、石井直社長が遺族に直接謝罪したことや、遺族に対して残業代の未払い90万円を含む慰謝料などの解決金を支払うことが盛り込まれています。解決金の金額は明らかにしていませんが、高橋さんが亡くなったことについて会社側が全面的な責任を負うことを前提とし、社会的に相当な金額であるとしています。
また、残業時間の上限の削減や、社員の心得、『鬼十則』の社員手帳への掲載の見送り、それに、パワハラなどのハラスメント予防といった再発防止の措置のほか、今後3か月以内に役員と管理職を対象に遺族も出席した研修会を実施することなどで合意したということです。
遺族側は今後も毎年、電通に再発防止の措置についての実施状況の報告を求めるなど、改革が進むか注視していくとしています。幸美さんは「合意には至りましたが、会社側がどんなに謝罪を述べたとしても、再発防止を約束したとしても、娘は二度と生きて帰ってくることはありません。娘や、これまで過労で亡くなった多くの人たちの死をむだにしないためにも、影響力のある電通が改革を実現してほしい」と話しました。
母親会見「SOSを出して」
電通と合意に達した20日は、幸美さんの54歳の誕生日でした。幸美さんは亡くなったまつりさんが携帯のストラップにしていつも身につけていた猫のぬいぐるみを持って、記者会見に臨みました。会見の中で幸美さんは、記者から「まつりさんにきょうの合意をどう報告したいか」と尋ねられ、「『こういうことになったんだよ』と伝えたいです。報告というより、娘が本当にどこかで生きて見ていてくれればいいのにと思います」と話しました。また、「すべて許して合意に至ったというふうに受け取られるのは不本意です。まつりが生きて戻ってこないということは、何事もなかったようにすべて許されるということではない」と訴えました。
さらに、まつりさんと同世代で長時間労働に苦しんでいる人に何を伝えたいかと聞かれ、「若い人たちは努力して会社に入社して、成果を求められて、それに応えようとして頑張っていると思うが、頑張りすぎないで、どこかにSOSを出してほしいし、逃げてほしいと思います。どこかに戻るところがあれば戻ってほしい。苦しい思いでいる人には、周りが手をさしのべてあげてほしいし、自分からもどこかに相談してほしい」と述べました。
社長は遺族に謝罪
弁護士によりますと、合意の文書に調印する際、電通の石井社長は幸美さんに対して謝罪しました。石井社長は、「ご遺族の皆様に哀悼の意を表し、ご冥福を申し上げる。希望を持って入社され、大きな可能性を秘めていた娘さんが亡くなってしまったということについて深く反省するとともに、ざんきの念にたえない。
二度とこのような事態を招かぬよう、働き方、時間の使い方を根本から改善したい。ご遺族との合意事項を着実に実行し続けることを誓う」と述べたということです。(2017年1月20日 17時25分 NHK)
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長時間労働で減給処分=5役員、報酬の20%―電通
時事通信 1/18(水) 19:00配信
電通は18日、新入社員だった高橋まつりさん=当時(24)=が過労自殺し、違法な長時間労働で東京労働局から書類送検された問題を受け、副社長ら執行役員5人を減給処分すると発表した。役員報酬を1月から3カ月間、20%減額する。別の執行役員ら4人も3カ月間、報酬の10%を自主返上する。
今回処分対象となったのは労務や営業、デジタル部門などを管轄する役員。高橋さんが所属していた部署の社員ら3人も処分したが、処分内容は明らかにしていない。
過労自殺問題を受け、石井直社長は昨年末に引責辞任する意向を表明している。電通は東京労働局の捜査が継続していることを踏まえ、今後追加処分も検討する。
電通は17日にインターネット広告をめぐる不適切事案で執行役員ら17人の減給処分を発表したばかり。このうち2人は今回の処分対象にも含まれているという。(時事通信 1/18)
→電通発表「労務問題に関する社内処分等について」PDFリンク