2017/1/24 20:18
過失相殺のために本人のミスを誇張する。
業務上の災害補償は労災保険で補償されますが、痛みや辛さなどの慰謝料については労災保険の対象となりません。そこで、企業は労災上積補償をして、損害賠償請求訴訟なくとも一定の補償をおこないます。企業内の労災補償でもなお、逸失利益、慰謝料として満足できないときは、民事訴訟により損害賠償請求を行うことができます。使用者は労働者に対してケガをさせないようする義務を負います。
労働者が安全な環境で就労できるよう配慮することを雇用契約上の信義に従った対応として義務付けられているのです。この使用者の安全配慮義務は、労働契約法により明文化されています。よって安全配慮義務違反があれば、労災保険のほか慰謝料、アフターケア、将来に亘り得られたであろう逸失利益を民事損害賠償として請求し、相手が支払い拒否したときは、裁判訴訟することになります。
使用者は、災害や危険が予見できるときには、労働安全法だけで不十分であり、使用者としての予見されるリスクへの万全の安全対策を講じる義務があるのです。 危険や有害物により被害が予見されるときに万全の回避対策を講じていなかった場合には安全配慮義務違反となります。
損害賠償金は、本人にも過失がある場合には、賠償額から過失相殺で減額されます。
裁判により損害賠償請求は手間がかかりますが、相手の過失があるときは自賠責基準の3倍基準の損害賠償を得られます。ただし、弁護士料金は日当、旅費交通の実費のほかに成功報酬20~50%取られます。また、損害賠償から労災保険給付、企業上積補償は相殺控除されます。
裁判提訴するのは、相手の誠意がないときや、名誉のためにおこなうものですから単なる金銭的解決だけ求めるないのです。被害者は安全配慮義務違反の事実を立証し、使用者は労働災害の発生が自分の責任ではないことを立証して争います。
使用者がケガをしたら本人の不注意や禁制事項違反をやたらと強調するのは、過失相殺と責任回避のためです。会社も悪いが、被災者も悪い痛み分けが過失相殺です。例えミスをしても、重篤な災害が予見できる限り、設備的な安全措置を講じる義務があるのです。
企業は労働者の命と健康を守る義務があり、そして被災した後にも、後遺障害を軽減するための配慮義務があるのです。
災害が発生して救援措置がまずいときは、企業として責任があります。大分製鉄所では、公設救急車を呼ばず自社救急車で搬送したことで助からなかったとして損害賠償請求し、裁判によらず示談金を支払っている。示談金額は非公開ですが、自社救急車で搬送した誤りを認めたと思われます。
大分製鉄所の作業員転落死、新日鉄住金側と遺族側の示談成立提訴見送りへ
(産経2016.10.31 17:06更新)
新日鉄住金大分製鉄所(大分市)で1月に起きた男性作業員(43)の転落死亡事故をめぐり、遺族が救急搬送時の同社の判断ミスを指摘していた問題で、遺族側代理人の弁護士は31日、会社側と示談が成立したと発表した。28日付で、内容は非公表としている。
遺族側は、同社が事故の際に119番をせず、自社配備の救急車で病院へ運んだことは誤りだとして、損害賠償請求訴訟を起こす意向を示していた。代理人弁護士は「同社が人命尊重の見地から安全体制を確立すると表明したため示談した」と話した。
遺族側によると、男性作業員は1月9日午前10時5分ごろ、足場を組む作業中に高さ約10メートルから転落。大分製鉄所は同社の救急車で市内の病院に運んだが、同45分に死亡が確認された。