2017/8/25 20:48
上には媚びへつらい、下には威張る権威主義的性格
エーリッヒ・フロムの『自由からの逃亡』を段ボールから取り出し40年ぶりに熟読しました。新たな発見をしました。「自由と我儘をはき違えないように、命令が必要とする」論理を看破するには、参考になりました。
E.フロムは、ナチスドイツから逃れる為、1933年アメリカに亡命し、1941年米国参戦直前に「自由からの逃走」刊行します。戦時中の1941年に発表されたドイツのファシズムの研究です。当時のドイツ人は、ヒトラーのような独裁者たちに自分の意思を委ね、ユダヤ人の迫害・虐殺に賛成したのか、といったことを分析している名著です。
ファシズムは経済的な条件だけではなく、ヒトラー支持しナチス支配に服することを熱狂的に進んでおこなうようになったのは、自ら「自由を捨てた」というのです。自由から逃げて、権威に服従し、上にへつらう人たちは、自ら権威主義になり、他人の自由を奪うようになるのです。
中世封建社会では、家族、協会、ギルドなど様々な社会集団の中で生活しており、個人の自由とは制限されていました。しかし資本主義社会が発達してくるにつれ、中世の社会構造は崩れ、今まで頼ることができた社会や集団が失われる。人々の心の中に不安や孤独、無力感が生まれてきました。新しい資本家層は恐慌のなかでも、新しい自由により充実した生活を送り、貧富の格差が拡大します。都市の中産階級や貧困層は新しい自由を享受できない。彼らは、孤立感、不安、無力、政治の頼りなさを増複させて、新しい自由に不安を覚えて「自由からの逃走」した。これがナチズムに繋がったと云うのです。
第一次世界大戦後のワイマール共和制によって与えられた「自由」が小資本の商店、職人、ホワイトカラー労働者などの彼らには「重荷」だったのです。インフレ、独占資本の発展、大恐慌で生活を脅かされ、中産階級の威信を下落させました。無力感、不安、組織全体からの孤立感が、偉大なドイツ帝国、「偉大な指導者」ヒトラーへの崇拝、献身へ呼び込みました。 ナチズムを歓迎した中産階級の人々が、自由の重荷から逃れて、新しい依存と従属を求めやすい性格を「権威主義的性格」と言いました。この性格の人達は、権威をたたえ、それに服従しようとする。と同時に一方では自らが権威的になり他人を自分に服従させたいと願っています。「権威主義的性格」者は、ヒトラーという権威のためなら喜んで自ら犠牲になる。その一方で,自分より劣った者としてユダヤ人を虐待し,自らの劣等感を解消しよう心理状態になった。そのことが、独裁者のファシズムを増長するようになったというのです。
E.フロム名言集から
「 権力欲は強さでなく弱さに根ざしている」
「真実を言う人間は、社会の集団の中ではひどく嫌われ、憎まれる。それは、真実を言うことによって、彼らはそれを抑圧している人びとの抵抗を動員するからである・・」
過去ブログ