2022/2/24
損害賠償損益相殺 費目間の流用禁止
三菱マテリアル細倉鉱山退職者107名が安全配慮義務違反として慰謝料を請求した裁判です。この裁判で退職時に支給された特別せん別金は慰謝料から損益相殺できないとする判決(1996/3/22)でした。裁判は双方控訴して2審で1996/10/15和解で解決しています。
細倉鉱山につづき三井金属神岡鉱山じん肺訴訟裁判は2016/1/21名古屋高裁判決が2017/3/15最高裁上告不受理決定し名古屋高裁判決が確定してすます。双方ともに退職者が慰謝料を請求した裁判です。
さて、光和精鉱は同和鉱業(DOWA)と同一の労災法定外補償です。DOWAは三井、三菱と同じ労働協約です。光和精鉱の特別せん別金の性格は、慰謝料ではないことになります。損害賠償の計算では、支払項目の流用禁止ですから、逸失利益部分と慰謝料部分を別々に分けて損失相殺します。
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細倉鉱山じん肺損害賠償慰謝料請求判決1996年3月22日
判決理由抜粋
二 損益相殺
〔中略〕通常、労災補償法に基づく保険給付の原因となる事故が惹起され、使用者がそれによって生じた損害につき賠償責任を負う場合に、政府が被害者に対し、労災補償法に基づく保険給付をしたときは、被害者が使用者に対して取得した損害賠償請求権は、右保険給付と同一の事由については損害の填補がされたものとして、その給付の価額の限度において減縮するものと解されるところ、労災補償法に基づく休業補償給付、傷病補償年金により填補されるのは、被害者の受けた財産的損害のうちの消極損害(逸失利益)のみであり、精神的損害(慰謝料)は填補されないと解されるから、右各給付を受領したとしても、その額を慰謝料から控除することは許されないとされている。
〔中略〕
被告らの主張するじん肺見舞金は、労使間の労働協約に基づき支給されるじん肺特別餞別金であると認められるところ、その法的性質は、労災補償法に基づく給付の相対的な低水準に対してそれを補い、被害労働者の所得を補償する機能を有する労災補償給付の上積協定であると解され、したがって、通常、右休業補償給付等と同様、被告らの主張するじん肺見舞金によっては、精神的損害(慰謝料)は填補されず、その額を慰謝料から控除することは許されないものと解される。